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過去の記事 2010年1月

無償同乗・好意同乗

2010/01/26

他人の運転する自動車に無償で乗せてもらい、走行中に運転者が交通事故を起こした場合に問題となります。
運転者(A)、Aの同乗者(B)、交通事故の被害者(C)とします。

Aは加害者として、被害者Cに対する損害賠償責任を負うことは勿論です。
では、この事故でBも負傷した場合、Aは好意・無償で自分の車に乗せていたBに対しても損害賠償責任を負うのでしょうか。いわばAの身内ともいえるBは、無関係の被害者Cに比べて、Aに対する損害賠償請求権を制限されるのではないかという話です。

この点、同乗者自身が交通事故の発生に影響を与えたような事情がある場合は格別、単に好意・無償で自動車に乗せてもらっているからといって、損害賠償額が減額される理由はありません。自動車を運転する者の責任を強化した自賠法(以下)は被害者である「他人」について有償・無償の区別をしておらず、判例も無償同乗者は「他人」に当たり保護の対象であると解しています(最判42.9.29)

ただ、先述のとおり同乗者が危険な運転を助長したり、運転者の危険運転を容認していたと認められる事情のある場合、信義則や過失相殺法理の類推適用によって、損害賠償額が減額されることもあります。
運転者のスピード違反を同乗者が煽ったり、運転者が飲酒していることを知りながら同乗したような場合には、この法理によって損害額が減額される可能性もありますから注意が必要です。

→賠償額が減額された事例
→賠償額が減額されなかった事例

○自動車損害賠償保障法(自賠法)3条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 ○最高裁昭和42年9月29日判決
「自動車損害賠償保障法第三条本文にいう「他人」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者および当該自動車の運転者を除く、それ以外の者をいうものと解するのが相当である」

カテゴリー: 後遺症の損害 · 死亡事故の損害

家事労働の休業損害・逸失利益

2010/01/14

たとえば専業主婦をしている方が交通事故に遭い、入院・通院をしている間の家事が出来なかったり、後遺障害が残って家事がうまく出来なくなったような場合に、休業損害や逸失利益が生じるのかという問題です。これは性別を問わず、主として家事労働に従事する者(家事従事者)が交通事故被害を受けた場合に該当する論点です。

この点、確かに家事従事者は日々の家事について給料を得ているわけではありません。しかし、この家事をもし他人に依頼した場合には相当額の対価を払わなくてはなりませんから、家事従事者は自ら行う家事について、財産上の利益を挙げていると考えられています(最高裁昭和49年7月19日判決)。

このように、家事労働に経済的価値が認められることは判例も肯定するところであり、交通事故被害者が専業主婦の場合でも、休業損害や逸失利益を請求することが可能となっています。
具体的な家事労働の価値については、女子雇用労働者の平均賃金相当額と推定するのが判例の立場です。実際の算定上は、賃金センサス上の女性労働者全年齢平均値または年齢別平均値などを基準にしていくことが一般的かと思います。

なお、被害者が一人暮らしの場合、他人のために家事労働をしているわけではないため、家事労働に関する休業損害や逸失利益は認められにくくなっているので注意して下さい。それ以外にも兼業主婦の場合、被害者が高齢の場合など、具体的な状況ごとに請求金額は変わってきますので、一つの参考として頂ければと思います。

カテゴリー: 休業損害 · 後遺症の損害 · 死亡事故の損害 · 逸失利益

労働能力喪失の有無が問題となる場合

2010/01/10

逸失利益を算定する場合も、まずは後遺障害等級が基準となります。後遺障害は、1級で100%、5級で79%、10級で27%といったように、等級ごとに労働能力喪失率の目安が定められています。

例えば年収1000万円の人が両足の指を全て失った場合(5級8号)、労働能力喪失率は79%ですから、基本的には1年間あたり790万円の逸失利益があると考えていくわけです。

しかし、実際に加害者側保険会社から交通事故の示談金額が提示される際には、後遺障害が現実の労働能力低下を生じさせていないとして、逸失利益がゼロないし相当に低いものとして構成されていることがあります。

これは、例えば肉体労働に従事している人が手指を失ったような場合は労働能力に大きな影響があると容易に想定できるのに対して、内勤の事務職員が顔面に傷を負ったような場合では、事務作業を遂行する上での支障はなく、労働能力喪失は生じていないのではないかという理屈です。これは外貌醜状のほか、生殖器の喪失、脾臓の摘出などにおいても問題となります。

確かに、顔面に大きな傷が残ったとしても、それ自体が事務作業の効率や品質に直接の悪影響を与えるわけではないでしょう。ただ、職場の対人関係や就職活動などの局面で全く影響が無いと考えることも難しいように思われます。被害者としても、こうした損害が賠償金額の算出において考慮されないというのでは、心情的に受け入れ難いのではないでしょうか。

判例は、外貌醜状について見ると判断が分かれているようです。ただ、逸失利益を否定する結論となった場合でも、慰謝料を増額させるという調整が入ることもありますから、損額項目にこだわらず、賠償額全体の増額を目指していくという視点で交渉や訴訟を進めることも必要になってくるかと思います。

カテゴリー: 後遺症の損害 · 慰謝料 · 逸失利益

過失相殺とは

2010/01/06

過失相殺とは、損害の発生において被害者にも一定の過失があると認められる場合に、その過失割合に応じて損害賠償額が減額されることをいいます。
仮に損害総額が1000万円のケースで、被害者側に30%の過失があったと認定された場合では、実際に支払われる賠償金は30%減額されて700万円となってしまいます。
このように過失相殺は実際の支払額に大きな影響を与えるため、交通事故損害額の算定において争点になりやすい項目の一つです。

過失割合の算定は、交通事故が発生した際の状況ごとに類型化された一般的基準を基本としつつ、具体的な事故の状況に基づいて加算減算する方式が通常です。
例えば信号機のない同幅道路の交差点で、直進するバイクと右折する自動車が出会い頭に衝突したような場合では、一般的にバイクの側にも30%の過失があるとされています。
そして実際の事故発生時、例えばバイクの側に著しい速度違反があったりすれば、過失割合が40%~50%に加算されることもあるわけです。
このように、具体的な状況によって過失割合を考えていくという手法は常識的なところかと思います。

なお赤信号で停止中に追突されたような場合などでは被害者側の過失0%ということも多いですが、交差点上で発生した事故においては、程度の差はあれ双方に過失ありとされることも多くなります。
事故に遭った方がよく口にされるように、「こちらは優先道路で、相手は一時停止線で停止しなかった」ような場合であっても、優先道路側の過失がゼロということにはならない場合もありますから注意してください。

カテゴリー: 後遺症の損害 · 死亡事故の損害 · 過失相殺



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