たとえば専業主婦をしている方が交通事故に遭い、入院・通院をしている間の家事が出来なかったり、後遺障害が残って家事がうまく出来なくなったような場合に、休業損害や逸失利益が生じるのかという問題です。これは性別を問わず、主として家事労働に従事する者(家事従事者)が交通事故被害を受けた場合に該当する論点です。
この点、確かに家事従事者は日々の家事について給料を得ているわけではありません。しかし、この家事をもし他人に依頼した場合には相当額の対価を払わなくてはなりませんから、家事従事者は自ら行う家事について、財産上の利益を挙げていると考えられています(最高裁昭和49年7月19日判決)。
このように、家事労働に経済的価値が認められることは判例も肯定するところであり、交通事故被害者が専業主婦の場合でも、休業損害や逸失利益を請求することが可能となっています。
具体的な家事労働の価値については、女子雇用労働者の平均賃金相当額と推定するのが判例の立場です。実際の算定上は、賃金センサス上の女性労働者全年齢平均値または年齢別平均値などを基準にしていくことが一般的かと思います。
なお、被害者が一人暮らしの場合、他人のために家事労働をしているわけではないため、家事労働に関する休業損害や逸失利益は認められにくくなっているので注意して下さい。それ以外にも兼業主婦の場合、被害者が高齢の場合など、具体的な状況ごとに請求金額は変わってきますので、一つの参考として頂ければと思います。