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カテゴリー '慰謝料'

労働能力喪失の有無が問題となる場合

2010/01/10

逸失利益を算定する場合も、まずは後遺障害等級が基準となります。後遺障害は、1級で100%、5級で79%、10級で27%といったように、等級ごとに労働能力喪失率の目安が定められています。

例えば年収1000万円の人が両足の指を全て失った場合(5級8号)、労働能力喪失率は79%ですから、基本的には1年間あたり790万円の逸失利益があると考えていくわけです。

しかし、実際に加害者側保険会社から交通事故の示談金額が提示される際には、後遺障害が現実の労働能力低下を生じさせていないとして、逸失利益がゼロないし相当に低いものとして構成されていることがあります。

これは、例えば肉体労働に従事している人が手指を失ったような場合は労働能力に大きな影響があると容易に想定できるのに対して、内勤の事務職員が顔面に傷を負ったような場合では、事務作業を遂行する上での支障はなく、労働能力喪失は生じていないのではないかという理屈です。これは外貌醜状のほか、生殖器の喪失、脾臓の摘出などにおいても問題となります。

確かに、顔面に大きな傷が残ったとしても、それ自体が事務作業の効率や品質に直接の悪影響を与えるわけではないでしょう。ただ、職場の対人関係や就職活動などの局面で全く影響が無いと考えることも難しいように思われます。被害者としても、こうした損害が賠償金額の算出において考慮されないというのでは、心情的に受け入れ難いのではないでしょうか。

判例は、外貌醜状について見ると判断が分かれているようです。ただ、逸失利益を否定する結論となった場合でも、慰謝料を増額させるという調整が入ることもありますから、損額項目にこだわらず、賠償額全体の増額を目指していくという視点で交渉や訴訟を進めることも必要になってくるかと思います。

カテゴリー: 後遺症の損害 · 慰謝料 · 逸失利益

近親者の慰謝料

2009/12/21

民法711条は、生命を侵害された者の父母・配偶者・子について、固有の慰謝料請求権を規定しています。

交通事故の損害には、逸失利益や休業損害など経済的な損害のほか、傷を負ったことや後遺障害が残ったことによる苦しみ等の精神的な損害という側面もあり、これらを全て金銭に換算して損害額を算出することになります。

交通事故によって被害者が死亡してしまった場合、実際に損害賠償請求を行うのは被害者のご遺族となりますが、その場合の慰謝料額は「死亡した被害者本人の慰謝料請求権(を相続したもの)」と「被害者遺族の精神的損害に対する慰謝料請求権」の双方を含んだものになります。

では、被害者が「死亡」した場合でなければ、近親者の精神的損害に対する慰謝料は認められないのでしょうか。
この点、最判昭和33年8月5日判決は、被害者が死亡した場合に必ずしも限定せず、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けたような場合には、その近親者にも固有の慰謝料請求権が生じうるとしました。

これは両下肢完全麻痺(東京地判平11.7.29)、植物状態(横浜地判平12.1.21)など、基本的には被害者本人に重度の後遺障害が残った場合に認められる損害項目です。

◎民法第711条(近親者に対する損害の賠償について)
 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

カテゴリー: 後遺症の損害 · 慰謝料 · 死亡事故の損害



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